チョコレートの知識と簡単にテンパリングが出来る裏技 | チョコレートをきれいに固める方法

テンパリング

チョコを作ろうとしたら「固まらなかった」「白い結晶が浮いてきてしまった」という経験はありませんか?


それはテンパリングという温度調整を行っていないからなのです。
本来 難しい温度調整を行うのでパティシエでも敬遠してしまうテンパリングですが、割と簡単にできる裏技をチョコレートの知識と共に紹介します。
知識はテンパリングの成功を高める為にも一読いただけると幸いです。

チョコレートとは

『カカオは南国のフルーツで、その果実は甘く爽やかな味』
チョコレートはその果実の種 カカオ豆から作られます。

カカオの樹

カカオの原産地はアフリカや中南米など、赤道の南北緯度20度以内のカカオベルトと呼ばれる限られた地域でのみ栽培されています。
カカオは1年を通して約1万もの小さな白い幹生花を付けますが、実になるのはその2%以下という植物。
※幹生花(植物の幹から直接咲く花)

カカオの花

カカオの正式名称は「テオブロマ・カカオ」(ギリシャ語で「神の食べ物」という意味)
紀元前から栽培されていていますが、19世紀前では固形化させる術はまだ無く豆をすり潰し水に溶かして風味を楽しむ(恐らくとても苦い)飲料でした。
19世紀半ばになって固形化させる技術が発見され、現在のような板チョコが作られるようになったのです。
長いチョコレートの歴史で、かじり付けて甘いチョコレートはわりと近年に誕生したのです。

カカオポッド

カカオの実はカカオポッドと呼ばれ、1つの実から果肉(カカオパルプ)に包まれたカカオ豆が20~40粒ほど採れます。
カカオパルプは甘くて爽やかな酸味があるトロピカルフルーツですが、チョコレートを作る際の材料となるので一般的に流通する事はあまりありません。

カカオポッド

カカオの品種

カカオには3つの品種系統があります。

フォラステロ種
殻が頑丈で病害虫に強く収穫量も多い、カカオ豆総生産量の80~90%を占める品種。
普段私たちが口にするチョコレートは、ほぼフォラステロ種から作られています。
クリオロ種
病害虫に弱く栽培も難しく収穫量が少ない、カカオ豆総生産量の3%以下。
香り豊かでマイルドな風味の希少種。
フレーバービーンズといわれチョコレートの製造工程で香り付けに少量加えられたりする。
トリニタリオ種
クリオロ種とフォラステロ種の交配種、栽培しやすく香りも良いなど双方の特徴をあわせいる。
カカオ豆総生産量の10~15%

チョコレートが出来るまで

1.発酵
収穫後 果実(パルプ)ごとカカオ豆を発酵させた後 乾燥させる。
発酵の工程で果実は水溶化して消えてしまう。
これを麻袋に詰め世界各国の加工工場へと運ぶ。

カカオ豆の発酵

2焙煎
カカオ豆を焙煎することで糖類とアミノ酸が熱によって反応を起こし、チョコレート特有の芳香や風味へと変わる。

カカオ豆の焙煎

3.破砕・分離
破砕して外皮や胚芽を除去して胚乳の部分のみを取り出す。
これをカカオニブと呼び、近年では健康食品としても注目を浴びています。
「カリカリ」とナッツの様な食感でビターな味。

カカオニブ

4.配合(ブレンド)
目的の味に合わせて各種カカオニブをブレンドする。
フォラステロ種をベースにしてクリオロ種やトリニタリオ種を加えたりなど。


5.摩砕(ペースト化)
配合したカカオニブをすり潰しペースト状にする。
このペーストを※カカオマスと呼びます。

カカオマス
※カカオマス
カカオマスから枝分かれして『チョコレート』・『ココアパウダー』・『カカオバター』へとなってゆく。
カカオマスを絞るとココアパウダーとカカオバターに分かれ、カカオマスにカカオバター・砂糖を加えるとチョコレートへとなってゆきます。

カカオバターとは30℃~33℃で急に固体から液体に変わる性質をもった油脂、チョコレートを口に含むと なめらかに溶けるのはカカオバターのおかげなのです。


6.混合(ミキシング)
カカオマス・砂糖・粉乳・カカオバター・油脂 などを混合する。


7.微粒化(リファインイング)
混合した材料をすり潰し微細化する。
この工程が終了すると乾燥したフレーク状になる。


8.精錬(コンチング)
フレーク状になったものを かくはん機で長時間すり混ぜる。
摩擦熱が発生し余分な水分が飛ぶ。

液体状のチョコレートが完成。


9.温度調整(テンパリング)
チョコレートは結晶構造の違った幾つかの固まり方をもっています。
その中で「くちどけ」「つや」「硬さ」が1番良い結晶構造へと誘導する温度調整をテンパリングと呼びます。

温度調整をしたチョコレートを型に流し込み、固めるとチョコレートの完成です。

チョコレートの種類

チョコレートは基本「スウィートチョコ」「ミルクチョコ」「ホワイトチョコ」の3種類に分かれます。

スウィートチョコ
カカオマス・カカオバター・砂糖で作られるチョコ。
ビターチョコ、又はダークチョコとも呼ばれる。
ミルクチョコ
カカオマス・カカオバター・砂糖・乳成分で作られるチョコ。
ホワイトチョコ
カカオバター・砂糖・乳成分で作られるチョコ。
カカオマスが入っていないのでカカオの風味はありませんが、乳成分が多く含まれるのでクリーミーな口当たり。
変質しやすく加工が難しい。
※厳密には乳化剤・香料・カカオバター以外の油脂も加えられています。

クーベルチュール チョコレート

クーベルチュールチョコレートとは製菓用のチョコレートで、コーティングなどに適していて パティシエがお菓子を作るときに使うチョコレートです。
ココアバターが多く配合されていて加工が滑らかにできるのが特徴です。
お店ではなかなか見かけませんが、製菓・製パン材料専門店 「富澤商店」などで購入できます。

クーベルチュール

テンパリングとは

チョコレートは6種類の結晶型をもっていて、固める際にその中で最も安定した結晶に誘導してあげるのがテンパリングです。
方法はいくつかありますが、基本次の3工程になります。

1.チョコレートの結晶を分解する。【溶かす】
2.カカオバターの結晶を作る。(幾つかの結晶型が混在)【冷やす】
3.理想の結晶のみ残し作業性(流動性)も確保する。【温める】

各工程では決まった温度帯にする必要があり、その温度帯に許される誤差は2~5℃ととても狭くなっていて そこにテンパリングの難しさがあります。

「お菓子屋さんが行なうテンパリング法」
1.湯煎をあてて溶かす。
2.仕込む量が多い場合はマーブル台と呼ばれる大理石の上で冷却「タブリール法」、少量の場合氷水をあて冷却「水冷法
3.最後はどちらも湯煎で温めます。

注意すべきは温めすぎてカカオバターを変質させない事、水気を混入させない事、各工程でしっかり混ぜる事。

テンパリングの温度調整はチョコレートの種類によって温度帯が変わります。

  1.溶かす 2.冷やす 3.温める
スウィートチョコ 50~55℃ 27~29℃ 31~32℃
ミルクチョコ 40~45℃ 26~28℃ 29~30℃
ホワイトチョコ 35~40℃ 23~25℃ 27~28℃

こちらはあくまで目安で、チョコレートのメーカーによって多少前後することがあります。

ブルーム

テンパリングに失敗してしまった際に発生する白い模様をブルームと呼び、見た目と食感を損なうものとなります。

ブルームには次の2種類があります。


ファットブルーム』油脂の結晶によるもの

ファットブルーム

シュガーブルーム』砂糖の結晶によるもの

シュガーブルーム

どちらもテンパリングの「温度調整」の失敗か、保存時の温度管理が悪いと発生してしまいます。

簡単に出来る裏技テンパリング

前述のテンパリング方法を見ていただくと「やはり、めんどくさい」です。
そこでテンパリングの裏技を紹介します。

「裏技テンパリング」
チョコレートを溶かし、細かく砕いたチョコを少しずつ加え31~32℃まで落とすとテンパリング完成という方法です。
チョコレートの結晶化の特性を活かし、※テンパリングが取れているチョコを核にして連鎖的に結晶化させるという原理です。
※販売しているチョコはテンパリングがされています。

裏技テンパリング

※(注)温度計は必ず必要です。

明治ミルクチョコ

使用するのは、お馴染みの「明治ミルクチョコ」3枚。


明治ミルクチョコでテンパリング

電子レンジにかけられるボールにチョコレート2枚分を割って入れる。


明治ミルクチョコでテンパリング

残りの1枚は細かく刻む。
※出来る限り細かく刻むのがポイント。


明治ミルクチョコでテンパリング

下ごしらえ完了。


明治ミルクチョコでテンパリング

ボールに入ったチョコを電子レンジに5秒かけ取り出して押しつぶす。
これを液状になるまで繰り返す。
チョコレートは中心から溶けてくる性質があるので押しつぶすようにします。


明治ミルクチョコでテンパリング

液状になっても45℃になるまで電子レンジに5秒かけ取り出して混ぜるを繰り返します。


明治ミルクチョコでテンパリング

細かく刻んだチョコを少しずつ加え混ぜます。
一か所にまとめて加えると団子状になってしまうので全体に散らばすようにに加える。
これを31℃に下がるまで繰り返す。


明治ミルクチョコでテンパリング

31℃になったらテンパリング完成。
あとは型に流し込んだりナッツなどにコーティングしたりして固まるのを待ちます。


テンパリングがしっかりできているか確認するには、パレットナイフやスプーンの先端に薄くチョコをを付けて2~3分置いて固まれば成功です。

明治ミルクチョコでテンパリング

温度を下げすぎて失敗してしまった場合、また45℃までチョコを温め再度テンパリングを行ってください。

テンパリングの成功例と失敗例

左がテンパリングして固めたチョコ。すぐに固まり ツヤがある。
右がただ溶かして固めたチョコ。固まりにくく シュガーブルームが出てしまっている。

ポイント

・夏場などは作業前にエアコンで室温と湿度を下げておく。
・各工程では練るようによく混ぜる。(結晶を均一にする為)
・夏場など刻みチョコの温度が高い場合は短時間冷蔵庫に入れ冷やしてください。
刻みチョコの温度が高いと温度が下がりにくいので。
ただし、長く冷蔵庫に入れしまうと取り出した際に結露が発生して失敗の原因となってしまいます。

裏技テンパリングの欠点

このテンパリング方法は 刻みチョコが少し溶け残ってしまいます。
溶け残を最小限にする為にも刻みチョコはなるべく細かくしてください。

コローの一言

この裏技テンパリングはフレーク法(シード法)と呼ばれる方法をアレンジしたやり方です。
タブリール法か水冷法でテンパリングをするほうのが仕上がりは良いのですが、多少の溶け残りを気にしなければこの裏技テンパリングはお手軽に出来るので魅力的だと思います。






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