スポンジケーキ・カスタードクリームなどお菓子作りには欠かせない材料卵
今回は、この特性を紹介していきます。
お菓子作りで『なぜこうするの?』といった疑問の答えと繋がってくるはずです。
卵は大きく分けて『水溶性卵白』・『濃厚卵白』・『卵黄』の3部位に分かれています。
1番外側の水っぽい部分が『水溶性卵白』そこから盛り上がった部分が『濃厚卵白』
そして中心に『卵黄』となります。
新しいものほど水溶性卵白は少なく、濃厚卵白が多く、卵黄がふっくらとしているので鮮度を見極めるポイントとなります。
赤卵と白卵
殻の色に赤と白がありますが、鶏の品種によって殻への色素沈着が違う為、
殻の色では一概にどちらが良い卵とは言えません。
大切なのは母体が育っている環境と、食べている餌です。
それが卵の味を大きく左右します。
お菓子作りに利用される卵の特性は大きく分けて『起泡性』『凝固性』『乳化性』の3特性になります。
1、起泡性
液体は表面張力が弱まると気泡を抱き込みやすくなります。
水に洗剤を加えると泡立つのは、洗剤に含まれる界面活性剤が水の表面張力を弱めるからです。
空気に触れると硬化するたんぱく質が含まれている為、
撹拌すると気泡を抱き、気泡の表面が空気と触れる事で、
気泡を保つたんぱく質が硬化し、安定して泡立っていくのです。
そこで(※1)砂糖の消泡効果を利用してよりしっかりしたメレンゲにします。
一見逆の特性のように思える消泡効果ですが、
大きな泡を消し、数多くの小さな泡に分割してくれるので、
しっかりとした構造体になり、『キメの細かい丈夫なメレンゲ』になるのです。
スポンジを作る際『2~3回に分けて砂糖を加える』のは、その消泡効果を分散させて使う目的があります。
最初にいっぺんに砂糖を加えて発泡せた時、
泡立ちにくいのは消泡効果が強く効きすぎているからです。
砂糖にも多彩な特性が存在していて、また別の機会に紹介したいと思います。
※1 正確には砂糖の保水性による消泡効果になります。
2、凝固性
卵には沢山の種類のたんぱく質が含まれていて、各たんぱく質の熱変性温度がバラバラに存在しています。
卵白は55℃から80℃の間で各たんぱく質が順に熱変性し凝固していきます。
80℃前後で熱変性を起こすたんぱく質が大部分を占めています。
卵黄は65℃から75℃で各たんぱく質が順に熱変性し凝固します。
この熱変性温度差を生かしたのが温玉です。
約70℃の温度でゆっくりと温め、70℃以上で凝固するたんぱく質は変性させないで残こすことで、あのトロっとした状態を作るのです。
スポンジケーキがふっくら焼きあがるのは
卵の起泡性によって含まれた空気が熱膨張し気泡を膨らまし、
卵や小麦粉のグルテンが熱で固まり、骨格を形成するので、
ふっくらと焼きあがるのです。
3、乳化性
乳化剤は水に対し親和性の強い親水基と油に対し親和性の強い親油基を備えていて、
水と油の間に入り繋げる事が出来ます。
卵黄内の水分と脂質を繋げ安定させています。
卵黄(レシチン)が酢(水分)とサラダ油(油分)をくっつけ、
なめらかな状態にしてくれるのです。
生地に溶かしバターを加えても分離しないのは卵黄の乳化性のおかげです。
バターを加えたあと生地をゴムベラでしっかり混ぜ、乳化させる事が大切です。
※必要以上に混ぜたり、卵の発泡が弱いと生地は沈んでしまいますので注意。
コローの一言
水溶性卵白は鮮度が落ちるにつれ多くなってくるものなのですが、
お菓子屋ではあえて水溶性卵白を使用する場合があります。
濃厚卵白はコシがあり、泡立たせにくいですがキメの細かいメレンゲになります。
水溶性卵白はコシが切れていて、泡立ちやすくキメの荒いメレンゲになります。
コシが切れている為、材料をしっかり混ぜやすい。
スポンジケーキに向いているのが濃厚卵白
きめ細かな気泡を作りやすく、丈夫なメレンゲが作りやすい。
水溶性卵白が欲しい際は、市販されている冷凍卵白を使用するのが手っ取り早いです。
コチラは始めから水溶化した状態となっています。
(※)イタリアンメレンゲとは泡立てる際に、熱したシロップを少しずつ加えて作るメレンゲの事です。
私が通っていた製菓学校の先生がよく言っていた言葉があります。
『お菓子づくりは科学だ』と、
ただ技を磨くだけでなく、『材料の特性を理解しつつ最大限生かしていく事も、
とても大切な事だよ』と言う意味だったのかなぁと思う最近です。
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