去年、私が和栗のモンブランの記事を書くのに食べ歩きをした時、多く目にしたのが『笠間の栗』『熊本県産の栗』など和栗の産地をアピールした表記。
それらのブランドを使ったモンブランは、『日本の秋を感じさせる様な 凛とした香り』が魅力的で、普段私が仕事で作っていた洋栗のモンブランには無いものでした。
いつかその産地を直接見に行って、美味しさのヒミツに迫れればと思っていました。
笠間の栗
という事で今回は日本一の栗の生産地 茨城県の笠間市にいってきました。
茨城県の中央当たりに位置する笠間市。
この地域は火山灰の土壌で 保湿性・通気性に優れており、昼と夜の寒暖差がある事で栗の栽培に適した地域となっています。
また、通年を通して美味しい栗を楽しむ事ができるように『貯蔵栗』の研究にも力を入れています。
東京を抜け利根川を越えると、国道6号は爽やかな田園風景の中を颯爽と駆け抜けるバイパスとなり、時間を感じさせないほど気持ちの良い道で、あっと言う間に茨城県に到着。
笠間市に入ってくると道路脇に栗林が目立ってきました。
栗拾い体験を行っている農家さんもあり、家族で栗拾いを楽しまれている姿も見られます。
古民家パティスリー『栗のいえ』
まずは、以前から気になっていた 笠間の栗を使った現地のパティスリー『栗のいえ』へ
海外で修行を積まれてきたシェフが、築100年以上の古民家を改装してつくられたお店で、
モンブランの栗の香りを活かす為、モンブランクリームを絞るのではなく削ることでより香りを引き立てた『こぼれモンブラン』が一推しのお店。
店内にはカフェが併設されていて、アシェットデセール(皿盛り)のモンブランなどを食べる事ができるのですが、生栗が出回るこの時期は予約が無いと利用することはできない程の人気。
『ん・・予約ですと (;’∀’)』
幸いテイクアウトは予約なしで出来ました。
『愛宕のこぼれモンブラン950円』
店内で頂けるモンブランは、より香り高く ふんわりとした食感が楽しめると思うので、次回は予約を入れて再挑戦したいと思います。。
モンブランの構造は、下から「焼きメレンゲ→甘さを抑えた軽めの生クリーム→栗の甘露煮→モンブランクリーム」という形
モンブランクリームは生栗と熟成栗をブレンドしたクリームで、香りを引き立てる為か、そぼろ状になっており空気との接触面が多くなっているのが特徴。
メレンゲのサクサク感、甘露煮のホクホク感、採れたての生栗の香りに熟成栗の甘味が足されたモンブランクリーム。
遠方からもお客さんが絶えないのも納得の美味しさです。
【※生栗と熟成栗の違いはこの後に説明があります。どうぞご覧ください】
焼きメレンゲは飴やチョコでコーティングしていないので、モンブランの風味に邪魔をしないが、その分水分を吸いやすいので早めに食べる事をおススメします。
栗農家『小澤栗園』
栗の事を知るはやはり農家、こちらは笠間でも特に人気の高い『小澤栗園』
敷地内では職人さんが栗を焼いていて、香ばしい香りが立ち込めている。
今食べる用の焼き栗と、栗ご飯用に生栗を購入。
焼きあがった瞬間の写真を撮らせていただきました。
焼き栗というと、私は街中でよく売っている天津甘栗のイメージが強いのですが、
それとはまったく違った食べ物です。
天津甘栗は砂糖を加えて煎るので、あの甘い香りは栗と砂糖によるメイラード反応によるものなのです。
※メイラード反応とは糖とアミノ酸に熱を加えた時の反応です。詳しくは過去の記事をご覧ください。
ここの焼き栗は素の栗だけで焼くので、新鮮な栗本来の優しい香りと甘味が楽しめます。
そして凄くホクホク。
夢中で食べつくしてしまった。(^^♪
栗の品種はとても多く、入れ替わりが激しい
栗には多くの品種があり9月から10月の短い期間に10種類以上の品種が入れ替わりながら収穫されていて、それぞれの品種によって風味の特徴が変わってくる。
写真だと見ずらいかもしれないので、代表的な3種を抜き出して記載します。
早生種 丹沢(たんざわ)
9月の上旬、秋の訪れを一番最初に知らせてくれる品種
甘味は控えめで粘り気の少ない実
中生種 筑波(つくば)
9月の上旬、日本で最も多く栽培されている品種
甘味、食感、香りのバランスが良く様々の料理に向いている
後生種 岸根(がんね)
10月の下旬、秋の終わりに採れる栗。
大粒で甘味が強くスイーツと相性が良い栗
生栗から和栗のモンブランを作っているパティスリーでは、その都度 使用している品種が変わってきます、なので同じシーズンでも風味が変わってくるはずです。
今回得られた知識から考えると、後生種に近づくにつれ甘味が増す傾向があるので、晩秋に近い時期のモンブランほどより美味しくなるのかな。
生栗と熟成栗
実は、採れたての生栗は甘味が少ないのです。
低温で保存することによって、栗の中にある酵素がデンプンを分解し糖に変えるので、甘味が増してゆくのです。
低温保存して甘味が増した栗を熟成栗といいます。
笠間市では独自の技術によって熟成させていて『貯蔵栗』と呼んでいます。
ただそれによって変化するのは甘味の量だけでなく、香りも変化していきます。
採れたては凛とした爽やかな香りなのに対し、低温保存した栗は芳醇な香りになります。
この香りの変化と甘味の変化はモンブランに大きく影響します。
生栗のモンブランの特徴
甘味 副材によって調節ができるが、基本甘さは控えめ
香り 爽やかな香り
熟成栗のモンブランの特徴
甘味 生栗よりも強い甘み
香り 芳醇な香り
コローの一言
上記で生栗のモンブランと書いたのですが、私の知る限りでは生栗からモンブランを作っているお店はあまり有りません。
その理由は、大きな手間と技術が必要になり、なにより生栗の鮮度は直ぐに落ちしまうので、信頼できる納品元との密接な関係が必要になってくるからです。
ただ、そのモンブランに出会った時の感動はとても大きかったです。
それと、同じ笠間市でも採れる地域によって「愛宕の栗」「岩間の栗」など呼び名が分かれていて到着した時少し戸惑いました。
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